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プロキャディ 小田美奈コラム
毎週月曜日更新

第155回 ルールを知らないことの怖さ

2009.10.19

特別に記憶に残るトーナメントがあります。
私にとって、優勝した試合はもちろん印象的ですが、悔しい思いをした試合や自分が大きなミスを犯した試合の方がより鮮明に心に残っているものです。
悔しい思いというのも、選手が競り負けたとかそういったものではなく、自分が思い通りのキャディができなかったときばかり。
毎日毎週、反省すべきことだらけのキャディ業ですが、2004年のミズノクラシックは忘れられない大きな傷として残る試合の1つです。
途中、ミドルホールでのこと。アプローチで上手く寄せくれたお陰でそのホールはパーで上がれたと思っていました。ところが、上がってみればダブルボギー。
問題はアプローチをした場所がサブグリーンだったということ。
日本ツアーではサブグリーンから打つことは特別なルールでもない限り当たり前のことという認識が私の中にあり、その認識がそこでは間違っていました。ミズノクラシックはアメリカツアー。サブグリーンからは打ってはいけないというローカルルールが出されていたことを知らなかった私は、選手にそのまま打たせてしまったのです。
誤所からのプレーということで2ペナルティ。
スタート前に渡された英語でびっしりと書かれたローカルルール。それと同じものが練習ラウンドの日からインフォメーションボードには貼られていたはずでした。
通訳のできる選手のマネージャーさんも毎日そばにいてくれました。
しかし、試合が始まってからローカルルールの存在に気づき、慌ててスタートホールでさらっと読み流してしまった私。
あっという間にその重要さに気づかされる事態が起きました。
コースによって、または試合によって違ってくるローカルルールは必ず事前にチェックをしなければならないということを痛いほど思い知らされた1週間でした。
ルールを知っているということも、プロキャディの大事な仕事の一つと言えます。
ルールを知っているということも、プロキャディの大事な仕事の一つと言えます。
コースの状況によって出される特別競技規則などでも怖いことがあります。
ある大雨の降り続いた大会で出ていた特別競技規則は「スルーザグリーンにある球は罰なしに拾い上げて拭くことができる。その後その球は必ずリプレース(元の位置に戻すという意)しなければならない。」というものでした。
こういった規則は、前日までの大雨などでフェアウェイの状況が悪いときにはよく出されます。泥のついた球はどのような球筋を描くか想像がつかないので、選手にとってはありがたい規則ということができます。
しかし、とある試合で一緒にまわっている3人の選手とそれぞれのキャディ3名全員が「リプレース」を「1クラブプレース」と勘違いしてラウンドしてしまい、失格になるという事態がありました。その中には単独首位だった選手もいて、メディアでも取り上げられるニュースとなりました。
2004年にローカルルールで痛い思いをしている私には、あの記憶を再び思い起こされる出来事でした。
とにかく早めの確認。細かな所までしっかりと把握すること。
キャディにとってルールを知らないということは、選手の素晴らしいプレーを無駄にしてしまうことなのです。
さて、先ほどのミズノクラシックの一件。
その後どうなったかというと、もちろんすぐに謝りましたが、ラウンド中に引きずっても選手に迷惑をかけるだけだということはわかっているので、反省はラウンド後にすると自分に言い聞かせていました。ところがあまりの事態の大きさに凹んでいる気持ちをごまかしきれていなかったようで、それに気づいた選手が奮起してその後すぐに取り返してくれました。それでもやはり結局は流れに乗れないまま初日が終わってしまったのでした。
最終日にはその2打がより重く感じられる結果となり、今でも私の中に大きく黒いものとなって常に警告を発してくれています。
 
次回更新予定:2009年10月26日

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