今までに5人の女の子たちから「キャディになりたいのですが…」という相談を受けました。 しかし、最初の子以外は電話でお話するだけで何も協力できませんでした。 実は、最初の子の面倒をみてみたのですが、思っていた以上に 難しく、自分の仕事にも影響が出ることを恐れて途中で放棄してしまったことから、それ以降は電話で話しただけで済ませるようにして しまったのです。
ところで、その最初の子はどうなったのかというと、今や人気沸騰中の女子ツアーでプロキャディとして活躍しています。彼女の名前は金子恵さん(28)。 一度だけ友達の紹介で会ったことがあったのですが、その数年後に突然の「キャ ディになりたい!」という電話だったので、私としては顔もわからない。そんな状況で選手に紹介するわけにはいかないということで、 バイト時代にお世話になった方にお願いして、トーナメントのアルバイトという形でキャディを経験してもらうことにしました。体力的 に厳しいだろうと感じていたからです。
どんなにキャディの技術面で優れていても、キャディバッグを担いで18ホール歩けなければ話になりません。身長159センチで華奢な体つき。誰しもキャディは無理だと言うでしょう。私もそう思っていました。その頃の女性キャディといえば、もともと研修生やハウスキ ャディの経験者であったり、体力に自信のある人ばかりでしたから。
しかし、人間の気力というのはすばらしいですね。 彼女は大きいサイズのキャディバッグを練習ラウンド含め6日間担ぎ通し、しかも優勝争いも経験。私は2人の選手を紹介しただけで、その後は彼女が自分から多くの選手に声をかけてい ました。有名選手にも必死に声を掛けに行く姿を見て、逆に学ばされたものです。 一回り小さい彼女が大きなキャディバッグに担が れているような姿を見る度に、もっと自分は頑張れるはずだと思わされました。今の状況に甘えている場合じゃないと。
人間の「これがしたい!」という思いはどんな苦労も簡単に乗り越えさせてしまうものですね。私自身も「キャディがしたい!」という気持ちに正直だったから、ここまで続けて来られたのだと思います。
プロキャディである彼女は、今や堂々とキャディバッグを担いで仕事をこなします。 お互いに刺激し合える存在でいられるように、私ものんびりしていられません。
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