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プロキャディ 小田美奈コラム
毎週月曜日更新

第131回 緊張感を楽しむということ

2009.5.4

優勝争いをしている選手にラウンド前のインタビューをしている場面は、テレビでお馴染みですね。
そこで時々耳にする「楽しんできたいと思います。」といった言葉。これに違和感を覚える方もいらっしゃるようです。
さて、私は週の始まり、ラウンド前、ラウンド中、楽しんでいこうといった内容の言葉をよくかけます。
私以外にも、緊張感の漂うラウンド中に「ゴルフ、好き?」と選手に聞いたキャディの話を聞いたことがあります。
実はこの「楽しむ」ということは、優勝争いをしている選手にとって容易なことではありません。緊張感と戦い、コースと戦い、他の選手と戦い…そんな状況の中で、誰が一体楽しむことができるでしょうか?
それでも敢えて楽しむということを宣言し、実行していこうとする選手。楽しんでもらおうと努力するキャディがいるということは、その「楽しむ」という気持ちにそれだけの意味があるからだと思います。
優勝争いの緊張感は、最終ホールに近づけば近づくほど高まっていくものです。
スタートホールで不安になるほど緊張してしまうことは仕方がないとしても、ある程度の落ち着きを持って最終ホールに向かって行きたいものです。
集中力を次第に高めていくこと、上がりの3、4ホールの重圧に負けない気力を溜めておくこと、そのためには出だしをできる限りサラッとこなしていくことが理想です。
そのためには少しでも力を抜くタイミングを作る必要があります。
球を打つときにはどういう状況であれ、優勝争いの只中にいれば勝手に集中できてしまうものなので、歩いている最中にそのタイミングを探します。
緊張感に飲まれて少しでも空回りが始まってしまうと、なかなか元に戻ることはできません。それを避けるために、どうしてもある程度の冷静さを必要とします。
どんな状況をも楽しむことができる選手は、本当に強いと感じます。
どんな状況をも楽しむことができる選手は、本当に強いと感じます。
優勝する選手の顔には、焦りに似た表情はまずありません。
どこか冷静でいてコースに対しては敏感、アドレスに入ると余計な力は感じられないけれど集中できている、そんな顔をしています。
歩いている最中は、時に会話をし、笑顔を見せ、なんらかの余裕を感じることさえあります。
経験の豊富なベテランの選手はその状況を自ら作り上げることが容易ですが、優勝争いに慣れていない選手にとってはとても難しいことです。
まずは緊張感を自分のものにしてもらうことからキャディの仕事は始まります。
緊張感溢れるラウンドを楽しむためには、まず自分が緊張しているという状態をある程度客観的に見ることが大事です。こんな緊張している状況でラウンドできて嬉しいと信じることから楽しむことは始まり、それによって緊張感から生じる不安や焦りといったものからは開放されていきます。

楽しもうという思いが与えてくれるのは、気持ちの余裕の部分なのではないでしょうか。
そして、優勝争いを本当に心から楽しむことができたとき、その選手の気持ちは計り知れないほど強いものとなるのだと思います。

 
次回更新予定:2009年5月11日

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