選手のコメントや解説の中で「流れ」という言葉がよく使われます。 この「流れ」というものはゴルフだけに関わらず、多くのスポーツに共通して使われる言葉ではないでしょうか。
ではその「流れ」とは一体何なのかと問われれば、はっきりこれと答えられる人はいないと思います。勝ち負けを左右するような何か。それが運そのものなのか、それとも人間そのもののもつ体から発せられる何かなのかはわかりません。 そんなものは無いという人もいることでしょうし、実際にあるかどうかもわからないものです。目に見えないものについて、共通の理解を得ようとすることは非常に難しいことです。 しかし、運と言われるような何かに左右されることに関わる者の間では、この「流れ」とは非常に重要で、身近なものと感じている人が多いのではないでしょうか。
私自身も、この「流れ」というものは目に見えなくとも存在すると信じています。
自分の人生を振り返れば、良かった日と辛かった日が混在しているとはいえ、大きく見ればあの時期は辛かった、あの時期は良かったといったように「波」があることがわかります。そうした「波」は急上昇したり急降下したりするものではなく、まさに「流れ」という言葉に相応しい形で緩やかな曲線を描いているように感じます。 ゴルフも同じように18ホールの中でも良し悪しの波があり、その波が大きな「流れ」を作り出しています。更にトーナメントのように3日間や4日間となると、より一層それを感じます。
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目に見えないものだからこそ、見たくなってしまうもの。 |
しかし緩やかな曲線を描いていた「波」が誰かの言葉や何かの出来事などがきっかけで大きく変化することがあります。 人生の場合で考えれば、恩師の言葉、合格、転居…と様々なものが考えられます。 ではそれをゴルフに置き換えるとどうなるか。 それはギャラリーの声援、ピンチな状況からのチップイン、風の変化…といったことでしょうか。 そういった何らかのものの影響で流れが変えられるとなれば、やはり身近で唯一助言が許されるキャディとしては、その「流れ」を好転させたい、もしくは良い状況を維持したいと思うものです。
そのためには、今の「流れ」を見極める必要があります。 今乗っている波が良い流れのものなのかどうかを知るためには、人生を振り返るのと同様に全体を見るようにしなければなりません。そして、多くの経験の中で見てきたこと感じたことを全体的に捉えながら、それを元に判断することになります。 そこにはもちろん、経験からくる「勘」も大事ですし、選手の発する空気も読めなければなりません。
「流れ」とは小さな「波」の集合体で、その波は色々な要素でできている…と思うのですが、如何せんその存在自体が危ういものなので、残念ながらそれについて解説することは非常に難しいし、ほぼ不可能です。 私が語れるのは、経験と確率からくる状況判断と「勘」についてだけ。 「流れなど存在しない」と言われてしまえばそれまでです。 |