戦いにも流れがあると私は考えています。 それぞれの選手が持つ流れとは別のところに働いている何か。それを「勝利の女神」と表現する人もいます。
戦い全体の流れを把握するためにはまず、自分がついている選手の流れだけでなく、優勝争いを繰り広げている全ての選手の流れをも把握したいところです。 現実には一緒にまわっている選手の様子しか見ることができないので、他の選手はスコアボードでどのように伸ばしてきているのかを見て、その選手の人となりを考えながら想像するしかありません。 最終日の緊迫した状況になればなるほど集中力を増して力を発揮してくる選手が、スコアを伸ばしてきていることがわかった時は注目しなければなりません。
選手の状態を知るには普段の選手を知っている必要があります。 常に同じ選手のキャディをしていればその選手の持つ癖などはわかりやすく、どういった時に良い流れが来やすいかということも他のキャディよりは容易に把握することができます。
昨今増えている一人の選手に決めていないキャディの場合でも、1年を通じてトーナメントを転戦していれば、全く初対面の選手はほとんどいないので、その選手の情報が何も無い状態でキャディをするということは滅多にありません。
その際にいかにその選手にあったキャディができるかどうかは、その選手の情報をいかに持っているかにかかっている部分も大きく、フリーでキャディをするためには常に多くの選手の情報を得るようにしておくことが必要になります。
|
ロープの外側でも、ギャラリーの声援には不思議な力があります。 |
同時にその情報は、戦い全体の流れを知る上でも非常に役に立つものです。 一緒にラウンドした時や、練習場での様子、時にはゴルフ中継などを見ることによって、おおよその癖や状態などを知るように心掛けるようにして、自分がキャディをしていない選手の情報も多く得ておくこと。人間観察力を磨くこと。 自分のキャディにも、戦いの流れを知る上でも役に立つものなので、常にアンテナを張り巡らせておくことが大切です。
しかし、選手一人一人の流れを読みきれたとしても、戦い全体の流れは読み切れないものです。 戦い全体の流れには、ギャラリーの方々の後押しのような見えない力、はっきりとは言いにくい「何か」の部分があるように感じるからです。 不思議な力に導かれているかのように、難しいパットが次々に入るときなどがそうです。そうした状況は突然やってきますが、いつ来るのか、それとも来ないのか、そうしたことは想像すら難しいことで、状況を判断する情報としてはなかなか入れにくいものです。 だからこそ面白いのでしょう。
でも、戦いの真只中にいる選手はただ目の前の1打にいかに集中できるかということだけで、戦いの流れなど気にしている場合では無いのですけれど…。 非現実的な「流れ」なんてものを考えてしまうのは、客観的にならざるをえないキャディの悪い癖とも言えるかもしれません。 |