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プロキャディ 小田美奈コラム
毎週月曜日更新

第177回 コースの罠 ~錯覚~

2010.3.22

「上りのラインだと思って打ったら、ひどくオーバーしてしまった。」「グリーンが近く見えたのにショットしたら全然届かなかった。」
そんな経験はありますか?
コースにはプレーヤーの感覚を狂わせるような錯覚を生じさせる状況がそこかしこにあります。
コース設計者の意図か、はたまた自然の産物か。それらに惑わされることなく、与えられた確実な情報だけを信じてショットすることは、想像以上に難しいと思います。

錯覚を生む要因の一つとして挙げられるのは「傾斜」です。
山岳のコースの場合、コース自体が全体的に傾いている場合があります。
人間が数パーセントの傾斜を感知することは難しいと聞いたことがありますが、全体的な傾きがその数パーセントだった時、その傾斜はプレーヤーにとって錯覚生む大きな要因になります。
グリーンに乗ってから傾斜を見るのでは、どうしても情報不足です。セカンド地点でもティーグラウンドでも、とにかくグリーンが見えた時点から全体の傾斜を確認しておかなければなりません。もちろん、騙されそうなラインは練習ラウンドで転がしておくことが必須。体で傾斜を感じることが、何より大事です。
ショットについても、何ヤード上っているのか、または下っているのかは事前のコースチェックで調べておくことになりますが、選手の感覚にずれが生じてしまうとショットに乱れが出ることもあります。
良い緊張感でコース全体を体で感じられているような状況の時は良いのですが、流れに乗れていない時などはこういった錯覚にだまされやすいものです。
その傾斜が「どこから」「どこへ」「どのように」ついているのかをしっかり把握しておかなければなりません。

木のある場所、大きさ、密集具合…錯覚を生むものを考え出したらきりがありません。
木のある場所、大きさ、密集具合…錯覚を生むものを考え出したらきりがありません。
錯覚の要因は傾斜以外にもたくさんあります。
例えば、グリーンの奥に何もなくて開けている時と、すぐに木の密集した林がある場合とでは、グリーンまでの距離の感じ方が違ってきます。
フェアウェイが徐々に狭まっていくようなコースレイアウトや、海や山が正面に見えるような風景も錯覚を起こしがちです。
グリーンの手前にあるバンカーも、エッジから少し離れたところにあるのにショットするところからその様子が見えないと、どうしても近くに感じてしまうものです。
ピンの長さによる錯覚もあります。
こうした様々な錯覚からどうしても感性を鈍らされてしまうからか、グリーン面や落とし所が見えないと嫌がる選手は多いものです。
プロの試合でボールをロストするということはほぼありません。
あるとしても、木の上に乗ってしまって確認できなかったり、あまりにも深いラフで探すことが困難であったりといった時ぐらい。ギャラリーの方が持って行ってしまったということも。
プロは曲がらないから…なんて、そんな事はありません。飛距離が出る分、曲がればロストの危険性もより高くなります。
では、なぜロストしないのか。
一番の理由は、なんといってもボールを探してくれる人がいること。
試合中は、ボールの落下地点付近にボランティアさんが配置されていますし、ギャラリーの方もいます。そんな状況でロストするということは、よっぽど運が無いということではないでしょうか。
感覚にずれが生じてしまっている時は、与えられた情報を信じてただその通りにショットするしかありません。
騙された感覚に翻弄されないように、まずはコースの情報をしっかり把握しましょう。
それでも騙されてしまう方は、とても素直な方なのかもしれませんが、そんな方を見てコース設計者は陰でニヤリと笑っているかもしれません。
 
次回更新予定:2010年3月29日

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