コースマネジメントをしていく上で必要な情報がいくつかあります。 例えば、ターゲットやハザードまでの距離、選手の持ち球と番手ごとの飛距離、地面の硬さとボールの転がり具合といったことですが、その中で大事な情報の一つでありながら非常に判断が難しいのが「風」です。 風の読み方については、このコラムで何度か紹介してきました。 しかし、風の吹いてくる方向や強さは自然によるものなので、どんなに勉強してもたくさんの経験を積んでも、完璧に読み切れるというものではありません。
ゴルフやスキーのジャンプ競技のテレビ中継を見ていると、よく見るのが現場で計測している風の強さと方向を示す表示。それをじっと見ていればわかりますが、同じ場所であっても風の向きや強さが一定であることはほとんどありません。 どんなに強い風であっても、一瞬止むこともあり、方向を変えることもあります。 当然、場所によっても風は変わるので、ボールが飛んで地面に落ちるまでに、何度となく変化する風を受けることになります。 それでもプロのキャディである限り、できる限り正しい方向を選手に伝えなければなりませんし、その風にあったターゲットと番手を確認しなければなりません。
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向こうに見える山でさえ、風を狂わせる元凶かも!?
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例えば、全く遮るものが無い平坦なコースであれば、風で悩むのはその強弱と時間による方向の変化だけです。ピンフラッグを確認していれば、最も強い風の方向を知ることができます。 ところが、少しでも遮るものがあれば、全く正反対の風を感じるという状況が起こり得ます。つまり、コースのレイアウトによって風はその本来の強さと方向を変えるのです。 それは設計者による罠である場合もあれば、木々の成長によって自然と作り出された罠という場合もあります。
木々が密集しているようなコースでは、全く木が無く隣のホールが見えているような場所があればその場所が風の変わるポイントになります。 練習ラウンドで情報を得られれば問題無いのですが、試合当日になって風が変わることもよくあること。そこが風の通り道になっているのかどうか、どの方向からの風が変化してどの方向にどれぐらいの強さで吹くかをその場でイメージしなければなりません。 グリーンの奥に高い木々が密集していれば、グリーンの周辺に風が無い可能性も計算に入れなければなりません。アップダウンの強いコースでは、吹きあがる風と吹き下ろす風にも注意しなければなりません。
そういった状況が重なった時に最も怖いのが、基本の風を見失ってしまうこと
見失ってしまった時に、また新たに探すのは容易なことではありません。 今感じている風と上空を吹いている風が違うことに違和感を覚えることが無いように、感じている風がなぜこの方向から吹いてくるのかという疑問に対してはっきりとした答えを見つけていかなければなりません。 その場の風は鳥と木々に聞きながら景色の中にその理由を見つけていくことで、基本の風を見失わないようにします。
「風」について、いくつものコラムを書くことができるのは、その難しさはもちろん、そこに答えが無いということに起因しています。 そして、答えが無いにも関わらず「風」について考え、そして語り合ってしまうのは、風がゴルフの面白さを引き出す大事な要素の一つであるからなのでしょう。 風と戦うのか、風と共に行くのか、それについて悩むのもまた一興です。
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