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プロキャディ 小田美奈コラム
毎週月曜日更新

第140回 シャッター音から始まるドラマ

2009.7.6

トーナメントのラウンドは、選手3名にそれぞれキャディが付いているので、最低6名になります。しかし、実際に6名だけでラウンドということはほとんどありません。
選手とギャラリーを分けるロープの中を選手と一緒になって、もしくは少々先を行くか後をついてくるかしながらラウンドに同行する方たちがいます。
まずは、選手のスコアを記録するマーカーさんやスコアを表示するボードを持つ係の人がいます。
私がアルバイトでキャディを始めたばかりの頃は全ての組にこうした係の方がつくことはあまり無かったように思いますが、今では至極当然に全ての組についていて、時にボランティアさんの応募人数や希望によっては、一つの組に数名の係がつくこともあります。
次に、競技委員さんが一つの組に一人つく場合があります。
普段のトーナメントでは一つの組に専属の競技委員さんがつくということはありませんが、メジャーと呼ばれる大会の決勝になると見ることができます。
シャッターチャンスを狙うカメラマンさんたち。
シャッターチャンスを狙うカメラマンさんたち。

そして、「PRESS」もしくは「PHOTO」と書かれたバッジや腕章、ポンチョなどを着用したメディア関係の方たちとプロのカメラマンさんたちです。
18番ホールやティーグラウンド周辺や練習場付近では、カメラマンさんの立ち位置はある程度制限され、わかりやすいようにロープなどでしきられて示されていますが、それ以外のコース内に関しては、カメラマンさん自身に委ねられているようです。
だからといって全てのカメラマンさんが勝手な場所で勝手に写真を撮っているということはありません。ほとんどの方が、良い写真を撮るために光の具合や背景などを事前にある程度把握しているようで、例えば有名選手がいる組に10名を超えるカメラマンさんたちがついてくる形であっても、全ての人がばらばらの位置から撮影するということはほとんどありません。選手のプレーに支障をきたさないような場所で、おそらくはもっとも綺麗に撮れると思われる場所にかたまっていることが多いです。
選手やプレーの状況によっては、普段全く気にならないような場所なのに突然選手が気にするということもあり、そういった場合には声をかけ移動してもらいますが、基本的には選手自身も、良い写真を撮ってもらいたいもの。試合中に撮影に協力することは無理でも、特に何も言わない、気にしないということがとても自然な形でできています。
しかも、トーナメントに来るカメラマンさんの多くはいつも同じ顔ぶれ。選手やキャディと一緒になって日本各地を移動し、時には海外の試合でも一緒になるので、自然と試合とは全く関係の無い会話もするようになるし、ご飯を一緒に食べに行くということにもなります。
お互いにもちつもたれつではないけれど、選手とカメラマンさんの間に、阿吽の呼吸に似たものがあると感じるのは、こういった中で作り上げられていく人間関係にも大きくよるのではないでしょうか。

最近は音が外に出ないように工夫されたカメラをお持ちの方も多いですが、それでもシャッターの音と言うのは集中している選手の耳に届きます。
カメラマンさんがシャッターを切るのはインパクト終えたその後の一瞬から。
優勝をかけたショットにはたくさんのカメラが向けられ、一斉に切られるシャッターの音はギャラリーの声よりも早く選手に届きます。
シャッターの音に押されたかのように、カップへと転がっていくボール。
鳴りやまないギャラリーの歓声とシャッター音。
トーナメントという一つのドラマの最高のクライマックスがそこにあります。

 
次回更新予定:2009年7月13日

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