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プロキャディ 小田美奈コラム
毎週月曜日更新

第183回 カットラインに一喜一憂

2010.5.3

優勝争いの陰に隠れてしまいがちな、予選通過をかけた熾烈な戦い。
「予選を通過しなければ何も始まらない。」そんな思いを抱きながら、多くの選手がプレッシャーを感じながら予選2日目を戦い、そして結果を待つのです。

予選初日を終えて、なんとなくカットラインがいくつになりそうかという予想を立てても、時には大きく予想が外れてしまうことがあります。特に、予選の組み合わせが午前組と午後組に分かれている場合にはそうしたことが起こりがちで、その多くが天候の急変によってもたらされるものです。
午前組がラウンドを終える頃にやっとスタートする午後組。午前組で芳しくない結果でラウンドを終えた選手は、午後組がスタートしていく頃には帰路につきます。
しかし、カットラインぎりぎりのスコアで予選を終えた選手やキャディは、会場やその周辺で午後組がホールアウトするまで速報とにらめっこしていなければなりません。
時には、空港で予約してある飛行機の搭乗時間ぎりぎりまで待機するということもあります。

予選2日目の速報の前では、上位とカットラインのチェックが欠かせません。小畑キャディに協力してもらいました。)
予選2日目の速報の前では、上位とカットラインのチェックが欠かせません。小畑キャディに協力してもらいました。

ところが、予想していたカットラインよりも想像以上に悪いスコアがカットラインとなった時には、既に自宅の近くまで帰ってしまっていたという選手が出てきます。
開催コースから自宅がさほど遠くない場合は一度帰る選手もそう珍しくはありませんが、そういった選手にはキャディやメーカーのプロ担当の方が急いで連絡をとります。
しかし、数年前に北海道から福岡へ帰ってしまった選手がいました。福岡空港に着いてプロ担当からの電話で予選通過したことを知り、迎えに来ていた奥様にお土産だけ渡してそのまま再び羽田経由で北海道へと向かったそうです。
移動総距離は約3千キロに及び、疲れが残ったままでの決勝となってしまいました。
もちろん、天候が荒れると分かっていればカットラインが落ちてくるであろうと誰もが予想するので、こうした事はそれほど起きるわけではありませんが、私が耳にした限りでも数人の選手が経験しているようです。

予選2日目がサスペンデッドになってしまった場合、カットラインがはっきり決まらないまま次の日に持ち越しとなってしまうと、予選通過の可能性がある選手はコース周辺に留まらざるをえません。帰るに帰れないという状況です。
1泊して結果を待ったのに残念ながら予選落ちというのも仕方がないこと。
できれば確実に予選通過というスコアであがれなかった自分を恨むしかありません。

最終組が最終ホールに近づいてくれば、徐々にカットラインが見えてきます。
しかし時には、最後の一人までわからないという状況も生まれます。
例えば、最終組でラウンドしている人がトータル1オーバーでまわっていて、それがまさにカットラインである場合、その選手がバーディーをとってイーブンパーでラウンドを終えれば、1オーバーでプレーを終えていた選手は皆予選落ちになってしまいます。
その場合、その選手は「ワンオーバーキラー」とか「ワンオーバー殺し」といったようにからかわれたりします。
逆に、あと一人スコアを落とせばカットラインが1打降りるという状況でその通りにスコアを落とした選手が、そのお陰で滑り込みで予選通過を果たした選手から感謝されて苦笑することもあります。

予選2日目の速報の前では、その言葉と共に喜びの声と悲しみの声が混じり合って、また一味違ったドラマが生まれているのです。

 
次回更新予定:2010年5月10日

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