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プロキャディ 小田美奈コラム
毎週月曜日更新

第186回 ギャラリーが作り出す空気

2010.5.24

「このパット入りそう」と思わせる目に見えない「何か」とは。
前回前々回はその「何か」の内の2つである「タイミング」と「間」について書いてきました。
目に見えないものだけに、言葉だけではどうしても伝わりにくいのが難点ですが、今回も懲りずにその「何か」の1つである「空気」について書きたいと思います。

試合中、ホールインワンが出た直後、そのホールではなぜかスーパーショットが続くという現場を幾度となく見たことがあります。
ピンポジションや風等のコースコンディションが、ホールインワンでさえ出るような易しい状況だったからという理由も当然考えられます。しかし、そうした現場で強く感じるのは、ギャラリーの異様な盛り上がりとそこから生じる高揚感です。
ギャラリーが大きな群衆となって作りだす「何か起こりそう」という期待感は、目に見えない風や空気のようなものになって、その場の雰囲気を明らかに他のホールとは違ったものにしているように感じます。
多くのギャラリーから期待されている選手が、ギャラリーやテレビカメラが多くなる頃からスコアを伸ばしてくることが多いのも、同じ理由によるところが大きいのではないかと思います。確かに、プレッシャーから良い集中力を生み出す力をその選手が持っているということはもちろんですが、大勢のギャラリーが作り出す空気がプレーに大きな影響を与えていると感じられる場面には何度も出くわしてきました。

ギャラリースタンドが人で埋め尽くされた時、そこから発せられる空気には圧倒されてしまいます。
ギャラリースタンドが人で埋め尽くされた時、そこから発せられる空気には圧倒されてしまいます。

想いが乗り移ったような弾道。
何かが後押ししているような球の転がり。
たくさんのギャラリーの願いと気持ちのこもった声援が、そして熱を帯びた空気が、大きなエネルギーとなってボールに乗り移っているような、そんな感覚に身震いしたこともあります。
ギャラリーの大歓声に、鳥肌が立った選手やキャディは少なくありません。
歓声が大きければ大きいほど、選手達のプレーは輝きを増します。ロープの中を颯爽と歩く選手達が大きく見えるのは、その輝きによるものだと思います。
スーパープレーを超える神懸り的なプレーは、選手一人では作れないのです。
そして、目に見えない「何か」はどんなに言葉巧みに説明しても、伝わるものではありません。百聞は一見にしかず。ぜひ、トーナメント会場に応援に来て下さい。
選手達を輝かせて下さい。そして、ドラマを一緒に作り上げてください。

論点を変えれば、他の理由をどのようにでもつけることができる目に見えない「何か」。それでも、多くの選手が淀みないルーティーンに自信をもらい、小さな深呼吸で自分自身を感じ、ギャラリーの声援に背中を押され、地響きのような大歓声には身震いする。
自然と向き合うことが多いスポーツだからこそ、その「何か」を感じ、そして考えずにはいられないのです。

 
次回更新予定:2010年5月31日

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