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プロキャディ 小田美奈コラム
毎週月曜日更新

第190回 焦る気持ち

2010.6.21

プライベートでゴルフをしていると、走らざるを得ない状況になることがあります。
例えば、前の組との間隔が開きすぎてしまった時、ロストボールやバンカーからバンカーへといったようなトラブルで同組の人を待たせている時などです。そんな時は、急いでプレーしなければなりませんし、そうなると自然と焦ってしまったりするものです。

プロのトーナメントでも、選手が走っている状況を見かけます。
その時はもちろんキャディも走らなければなりませんし、先にボールの地点に行って距離を測らなければならないキャディの方が選手よりもよく走っているかもしれません。
そうした状況というのは、競技委員から急ぐようにと指示されている場合がほとんど。つまり「走らされている」という状況です。
前の組との間隔やタイムテーブルをオーバーしている場合に、競技委員によって急かされるのです。

ボール探ししてたら、あっという間に前の組に置いていかれます。私なら焦ります。
ボール探ししてたら、あっという間に前の組に置いていかれます。
私なら焦ります。

そこで気になるのはスロープレーによる課罰です。
男子ツアーの場合、スタート前に何時何分にどのホールを終了していなければならないかが示されたタイムテーブルが配られます。そこに示された時間をオーバーしていて、しかも前の組と間隔が開いてしまっている場合に競技委員より警告を受けます。
その後、改善が見られなかった場合には、プレー遅延による2打罰を受けることになります。

前の組と離れてしまう原因は、トラブルによるものと選手自身によるものがあります。
一人一人は与えられた時間内でプレーしていても、与えられた時間をギリギリまで使う選手が一つの組に集まってしまえば、その組は自然と遅くなりがちです。そこで、何らかのトラブルが起きれば、そこから普通にプレーして前の組に追いつくことは困難です。
当然、走ることでタイムテーブルの時間から外れないようにするのが普通ですが、自分のプレーは速いと信じている選手にとって、走らされることは気分の良いことではありません。急かされて急ぐのはプレーが速い選手ばかりで、遅い選手はマイペースという光景は実はそれほど珍しいことではなく、プレーの遅い選手が「自分は遅くない」と信じていることが多いという事実も少なくありません。
そうした中で、自分ばかりが急いでいるような感覚に苛立ちを隠せなくなる選手がいるのも仕方のないことだと思います。

プレーが遅い選手と同じ組になりたくないと思うのは当然のこと。
もし同組になってしまったとき、その遅さで選手本来のリズムを見失わないようにすることもキャディの大事な仕事ですが、そんな日はいつも以上にデリケートに精神面をフォローしていくことが要求され、キャディにとっても苦しい1日になってしまいます。
やましいことは何も無いのにパトカーを見たらドキドキしてしまうという人ならば、競技委員が時計を覗いている姿を見ただけで焦ってしまいがちな選手の気持ちを理解できると思いますが、そういった焦りの気持ちに繋がりそうなポイントを出来る限り見逃さないこともその後のフォローのために必要になってくるのです。

どのような状況においても自分のリズムを変えずにプレーできるかというと、それは本当に難しいことです。
いつも上位にいる選手にマイペースな人が多いのは、そうしたところに大きく関係しているかもしれません。

 
次回更新予定:2010年6月28日

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