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プロキャディ 小田美奈コラム
毎週月曜日更新

第196回 優勝!その後は…

2010.8.2

「優勝した気分は?」と質問すると、「ホッとした」といったような安堵感を挙げる人が多いのが、キャディの特徴。
私自身も喜びよりもまず「無事に仕事を終えた」という気持ちでいっぱいになります。
安堵感と共にキャディバックを担いでクラブハウスに戻るキャディ。
しかし、その後のキャディを待ちうけているのは喜びではなく、長い長い待ち時間だったりします。

優勝が決まると、まずはグリーン脇でその瞬間を見守ってくれていた家族や仲間たちと喜びを分かち合います。こうしたシーンは、テレビ放送でもよく目にする光景です。
ところが、こうした時間は意外にあっという間で、選手はスコア確認のため、すぐにアテスト場へ移動しなければなりません。
キャディはアテストに向かう選手と離れ、18番ホールのピンフラッグを取り、クラブハウスへと引き上げます。
ここからキャディと選手が再び喜びを分かち合うまでには何時間もの時を要します。

アテスト後、すぐに最終ホールのグリーン脇で優勝インタビューが行われます。
その間、グリーン上では着々と表彰式の準備が進み、インタビューが終わると、そのまま表彰式が行われます。
表彰式が終わると、今度は写真撮影が始まります。
大会を陰で支えてくださったボランティアの方々との記念撮影の後、プレス用に優勝カップを手にした写真、優勝副賞があればその写真も撮ります。
その後に、選手仲間から池に落とされるなどの手痛い祝福を受けることもあります。
(この時、クラブハウスからキャディも呼び戻され、一緒に落とされることが多いです。私も1度だけ落としていただきました。)

ギャラリーがみなさん帰っても、優勝者とそのキャディは実はまだコースにいるのです。
ギャラリーがみなさん帰っても、優勝者とそのキャディは実はまだコースにいるのです。

選手がクラブハウスに引き上げてくるまでの間に、キャディはプレス用に全ホールの番手チェックを受け、場合によっては簡単なインタビューに答えることもありますが、話すべき情報を話したらすぐに片づけに入ります。
片づけをしながら多くの人から祝福を受けますが、最終日は飛行機の時間やギャラリー渋滞なども考慮して足早にクラブハウスを後にする人ばかりで、優勝した選手の関係者ばかりが残っているだけという状況になることがほとんどです。
キャディバックをパッキングし、ロッカーを綺麗にして、キャディ自身の帰り支度を終えても、選手はロッカーに戻ってきません。
何らかの理由で一度ロッカーに来る選手もいますが、ほとんどの場合はグリーン周辺からプレスインタビューへ。それを終えたら今度は待っているファンの方にサインをしに行きます。その後、パーティーがクラブハウス内で行われ、そしてやっとロッカーへということになります。
キャディと喜びを分かち合えるのはその後です。
その頃には、外は真っ暗なんてこともあります。

慣れたキャディになると、選手がアテストに向かう前に選手のロッカーキーを確保し、片づけを終えたら先に帰る旨を伝えてしまいます。
少々冷たく感じるかもしれませんが、キャディは翌日の月曜日には次の試合会場に入らなければならない場合がほとんどなので、荷造りを終えた時点で気持ちは次のトーナメントに向いているということなのでしょう。

ロッカーでなかなか帰ってこない選手を待っている時間は幸せな時間ですが、帰りの飛行機や終電のことが気になりだし、段々落ち着かなくなってしまうというのも現実。
キャディにとって「嬉しい悲鳴」とは、まさにこの時間のことを言うのかもしれません。

 
次回更新予定:2010年8月9日

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