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プロキャディ 小田美奈コラム
毎週月曜日更新

第44回 表情の裏側

2007.9.3

選手の気持ちを変えるために、会話をしてみたり、歩く速さを変えたり、といった事を前に書きました。 それらは「選手の気持ちの変化が読み取れている」ということがもちろん前提となります。今回は、その「気持ちを読む」ということについてです。

表情や態度に出やすいタイプの選手ならとてもわかりやすいのですが、人間というのはそんなに単純なも のではありません。
笑っていても、嬉しい可笑しいといった気持ちの表れとは限りませんよね。苦笑いやあきれ笑いといった場合も少なくありません。笑顔の裏でずっと怒っている選手もいれば、当り散らしてすぐにすっきりしてしまう選手もいます。格好をつけるために怒ったふりをするということもあります。集中できている時も怒っているような顔つきに見えるものです。
表情だけでなく態度でもそうです。例えば余裕あるようなことを話していても、内心ではビクビクしていたり、もしくは焦っていたり。クラブを叩きつけるのも、怒りだけとは限らず、それで気持ちを入れ替えようとしている場合もあります。

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ずっと同じ選手についていると、気持ちもわかりやすくなり、次第に同じような表情をするよ うになってきます。飼い主に似ると言われるのは、選手とキャディにもあてはまるようです。
キャディはそういった選手の表情や態度から、その裏側にある本当の気持ちをできる限り知る必 要があります。知ることによって、してはいけないこと、しなければならないことが変わってくるからです。
その気持ちを知るためには、同じ気持ちになってしまうのではなく、一歩ひいたところから見るということが必要とされます。その選手の癖や性格を少しでも理解し、キャディとしての自分のキャラクターを大事にしながら、その選手に合う気持ちの持って行き方を見つける努力をします。
同じコースを同じ人が回っても、同じ内容、同じスコアということが無いように、うまくいっている時、何をしてもうまくいかない時など様々。山あり谷ありの18ホールは、人生の一部を象徴しているかのように感じられる時があります。「車の運転で性格がわかる」とよく言われますが、ゴルフでも性格が少しわかるような気がする時があります。
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プロの場合は魅せる演者でなければなりません。見られている立場上、格好つけたくなるもので す。もちろん、格好つけることはとても大事なこと。しかし、気持ちの入った派手なガッツポーズや、苦渋の表情も、自然と出たものというのは、見ている人を何故か惹きつけるものです。
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キャディはそれを少し冷めた目で見ることが、いい仕事をするためには必要とされるということ です。「キャディは優秀な心理学者」と表現していただいたことがあります。もちろん目に見えない部分なので、答えはありません。こうして書きながらも、そうすることに本当に効果があるのだろうかと悩みます。ただ、選手が気持ちよくラウンドしてくれたら、それは正解なのだと思います。

 
次回更新予定:2007年9月10日

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