Home > コラム一覧 > 小田 美奈のコラム
プロキャディ 小田美奈コラム
毎週月曜日更新

第82回 メモ

2008.5.26

練習ラウンドの日の朝、クラブハウス内にいるとよく聞かれることがあります。
「メモはどこで売っている?」
キャディの話をする時にかかせない「メモ」。今までにも何度か触れさせてもらいましたが、今回はその「メモ」だけに焦点を当てたいと思います。
「プロやキャディさんがいつも見ているあの小さな本みたいな物はなんですか?」
そうです、それが「メモ」。その名を「ヤーデージブック」と言います。
男子ツアーではサイモン・クラーク氏が作っているので「サイモンメモ」、女子ツアーでは長谷川輝夫氏(愛称…ベア)が作っていることから「ベアメモ」という名前になっています。
それぞれ選手の要望の多いものに準じた形で作られているので、少々中身は違いますが基本的にはコースの細かい距離表示などがなされているもので、使う人が情報を書き込みやすいように作られています。
サイモンメモとベアメモの大きな違いは、グリーンの大きさと傾斜の書かれた方です。
サイモンメモに比べてベアメモはグリーンが大きく書かれている割に、傾斜はあまり書かれていません。これは元々女子選手が傾斜を書くよりも、ボールを転がした際にどれ位きれるかを書く人が多かったことから由来して、今の形になっています。
それ以外は絵に個性はあるものの、ほぼ同じ内容になっています。
発売されるのは主に練習ラウンドの日。場所はロッカールームの中だったり、マスター室前の周辺だったりと、選手やキャディがよく通る場所であることがほとんどです。
1冊2000円、2冊(選手とキャディの分)では3000円で販売されます。(トーナメント開催が初めてのコースは4000円になります。)
プロキャディ 小田美奈コラム
左がベアメモ、右がサイモンメモです。同じホールのはずなのに…?
女子ツアーでベアメモを作成、販売している長谷川輝夫さんは、髭を生やした風貌から「ベア」という愛称がついていますが、多くのキャディは「親父」と親しみを込めて呼んでいます。元々はプロキャディで、沖縄以外なら国内の試合全て車で移動し、車で寝泊りしながら転戦していました。
1999年のフィリップモリスチャンピオンシップで川岸良兼選手のキャディとして優勝に貢献。その後、膝を痛めてキャディをしばらく休業。男子ツアーでは既に定着していたヤーデージブックを女子ツアーで製作、販売し、今では多くの女子選手に使用されています。
プロキャディ 小田美奈コラム
長谷川さんです。大大大先輩キャディです。
メモはキャディにとって必需品です。
しかしキャディの仕事に慣れるまでは、雨の日のこのメモに悩まされます。
雨に濡れるとページがめくりにくくなり、書きにくくなるどころか、時には破けてしまったりするからです。紙一枚一枚のはじをセロハンテープで補強してみたり、大きなビニール袋に入れてみたりと、自分なりに考えて工夫している姿を良く見ますし、私もよく真似しました。
第59回の「便利ツール」で同じように雨の時のメモについてふれましたが、雨に濡れにくいように工夫されたカバーがあって、そこにキャディとしての経験が足されると、メモは最後までしっかりとした形で役に立ってくれるのです。
その経験というのは、書き込んだ情報を憶えていることとこれから得る情報を憶えること。そして、雨という情報を得て、感じること。それによってメモを開く回数は減って、選手の傘の中に自分も入っていられるときにだけ作業するので、自然と濡れることはなくなります。
キャディの頭の中身がそのまま詰まったようなメモ。そのメモを作ってくれている人のイメージを、手にしたキャディが自分のイメージに転換して上手く使いこなせるかどうかがとても大事です。メモ1冊にも人間関係の大切さを感じます。
 
次回更新予定:2008年6月2日

第81回 たくさんの許可証 2008.05.19
第80回 学生アルバイトさんとボランティアさん 2008.05.12
第79回 プロキャディ紹介6…大溝雅教 2008.05.05
第78回 タイミング 2008.04.28
第77回 集中できる環境作り 2008.04.21
コラムTOPへ バックナンバーを見る


go to top